
夜中に論文の図を眺めていて、思わず「ああ、確かにバーベルだ」と声が出ました。
フィンランド発の量子コンピュータ企業 IQM の研究チームが 6 月 4 日、新しい量子誤り訂正符号「バーベル符号」を提案する論文「Barbell Codes: qLDPC Codes for Superconducting Quantum Hardware」を arXiv に投稿しました。Shin Ho Choe 氏、Vincent Steffan 氏ら 8 名による 27 ページの研究で、同社の超伝導プロセッサ「Constellation」系のチップ設計と符号をセットで出してきたのが持ち味です。
量子コンピュータの中身(量子ビット)は、とにかく壊れやすい。ほんのわずかなノイズで計算が狂うので、実用機には「誤り訂正」が欠かせません。仕組みをひとことで言うと、1 個の大事な情報を大勢の量子ビットに分散して持たせ、見回りと多数決で間違いを直し続ける、というもの。問題はその人数で、定番の「表面符号」では、信頼できる論理量子ビット 1 個を作るのに物理量子ビットが数百〜数千個単位で要るとされてきました。「実用には 100 万量子ビット級が必要」という、よく聞くあの話の根っこはここです。
表面符号の弱点は、隣り合った量子ビットとしか連携できない前提にあります。隣としか答え合わせができないから、人数で稼ぐしかない。これに対して近年注目される qLDPC 符号という方式は、離れた量子ビット同士を組ませることで、少人数でも強い訂正を実現します。ただ、「チップの上で、離れた相手と物理的にどうつなぐのか」が長年の宿題でした。
バーベル符号の答えはかなり潔くて、量子ビットの塊ふたつを、長い結合器(カプラ)で 1 本ずつ橋渡しします。図にすると、両端の重りを 1 本のシャフトでつないだバーベルそのものの形。教科書的な隣接配線の世界に、離れた席を直結する糸電話を通すイメージです。しかも符号を大きくして守りを固めても配線の複雑さは増えない設計だと論文は述べていて、複雑さが規模に比例しないなら、量産の目が出てきます(必要な部品が現実の超伝導チップで作れるかどうかの検討も、論文内で一通りやっています)。
数値シミュレーションの結果がなかなか強烈です。回路レベルのノイズを入れた解析で、論理量子ビット 1 個あたりデータ量子ビット 30 個未満という少人数のまま、物理エラー率 0.01% の環境なら数兆回の訂正サイクルにわたって情報を守れたとのこと。IQM の数値解析では、表面符号と比べて論理エラー率は最大 3 桁低く、必要な物理量子ビットは最大 8 分の 1で済むとされています。論理量子ビット同士の演算についても、チップに合わせた回路のシミュレーションで同水準の性能が確認されました。
念のため書いておくと、これはまだ全部シミュレーション、紙の上の話です。長い結合器を実機で歩留まりよく作れるかの実証はこれから。それでも、理研や富士通をはじめ超伝導方式を進める日本の開発チームにとっても、「量子ビットの数をひたすら増やす」以外の道筋が具体的な配線図つきで示された意味は小さくないはずです。誤り訂正のコストが桁で縮むなら、創薬や材料計算が回り出す実用機までの見積もりも手前に寄ってくる。量子ニュースの「あと何年」という物差しが、符号の設計ひとつで動く時代になってきました。猫が膝で寝ているうちに、もう少し続きを読みます。
情報元: Barbell Codes: qLDPC Codes for Superconducting Quantum Hardware (arXiv)
※この記事の本文は生成AIが執筆しています。事実関係は公式一次情報で確認しています。