
量子コンピュータの話になると、「すごい」と「まだ無理」が同じ口から出てくることがよくあります。今回の知らせは、その両方を少しだけ前に進めるものでした。Microsoft と Quantinuum が、量子計算の「間違い」を物理的な土台と比べて最大800倍まで減らせたという実機データを、Nature の査読論文として公開した、という話です。
論文のタイトルは「Improved quantum processor logical error rates via correction and detection(訂正と検出による量子プロセッサの論理誤り率の改善)」。Microsoft の量子仮想化プラットフォームを、Quantinuum のイオントラップ型の実機の上で動かした結果だと説明されています。ふと考えてしまうのですが、量子の世界でいちばんやっかいなのは「賢さ」より「もろさ」のほうで、今回はそのもろさに正面から取り組んだ研究なんですね。
数字を一つだけ。もっとも目立つのは、Bell状態という基本的な操作で、誤りの起きる割合がおよそ0.8%から0.001%へ下がったこと。差し引き800倍の改善です。ほかにも、誤り訂正を繰り返す処理では1ラウンドあたり51倍、12量子ビットの「cat状態」では22倍と、全体として11倍から800倍の幅で良くなった、と報告されています。
ここで言う「間違いを直す」を、身近な言葉に置き換えてみます。大事な書類を一枚だけで保管すると、汚れたり破れたりした瞬間に内容が失われます。けれど同じ内容を何枚かに分けて持ち、定期的に照らし合わせて食い違いを直せば、一枚くらい傷んでも全体は守れる。量子の誤り訂正も発想は近くて、もろい物理量子ビットを何個も束ねて、その「合議」で一つの丈夫な情報をつくる、というやり方です。
具体的には、Knillという研究者の方式に着想を得た12量子ビットの符号で論理2量子ビットを、16量子ビットの「tesseract(4次元の立方体)カラー符号」で論理4量子ビットを表現し、最大12個の論理量子ビットを並べて動かせた、とされています。専門の言葉が続きますが、要は「壊れやすい部品を賢く組み合わせて、壊れにくい一個のまとまりに仕立てる」設計が、机上ではなく実機で効いたわけです。
光と影の両方を見ておきたいので、限界も正直に。これは「量子コンピュータが完成した」という話ではありません。扱えている論理量子ビットの数はまだ十数個の規模で、実用的な計算をこなすには、もっと多くの量子ビットと、もっと長い計算に耐える安定性が要ります。誤りを直す土台が一段固まった、という段階の知らせです。
個人的にいちばん惹かれたのは、この成果自体は2024年4月にいったん到達していて、それが2026年になって査読を経てNatureに載った、という時間の流れです。「発表」と「検証済みの掲載」のあいだに横たわる年月こそ、科学が浮ついた誇張に流されないための仕組みなんですね。話題になった瞬間ではなく、第三者の目を通ったあとに改めて世に出る——その順番に、この分野の誠実さがあらわれている気がします。
日本にとっても、これは遠い国の研究室の出来事では終わりません。国内では理化学研究所や富士通、NEC などが量子の開発を続けていて、誤り訂正は各陣営に共通する最大の関門です。海外の実機データが査読を通って積み上がるほど、「どの方式に、どれだけ芽があるのか」を国内の研究・産業・政策が判断する材料が増えていきます。答えを急がずに、けれど確かに動いている技術として、ここは見ておきたいところです。
情報元: Improved quantum processor logical error rates via correction and detection(Nature)
※この記事の本文は生成AIが執筆しています。事実関係は公式一次情報で確認しています。