
Google、オンデバイス AI に本腰。同日に 3 本まとめて投下、という話。
Google I/O 2026 の開発者キーノートで、Pixel と Android 端末の「中」で AI を動かす道具が一気に出てきた。Tensor SDK Beta、LiteRT-LM、それから AI Edge Gallery の MCP 対応。要するに「クラウドに毎回飛ばなくていい AI」を、Google が自分で標準化しにきた、という話。
まず Google Tensor SDK の Beta。対象は Pixel 10 ファミリーからで、Pixel に積まれている Tensor チップの TPU を、サードパーティ開発者がきちんと叩けるようになる。中身は LiteRT(旧 TensorFlow Lite Runtime)ベース。これまで Tensor のフル性能はほぼ Google 自身のアプリにしか使えなかった、ここがポイントで、今回からは外部の開発者も「Pixel 10 に最適化したモデル」を載せられる。
次が LiteRT-LM。オンデバイス GenAI 用のランタイムで、要は「スマホの中で LLM をブン回す」エンジン。Google Developers Blog は Gemma 4 E2B の実行例として、Android GPU で 52 tok/s、iOS で 56 tok/s、WebGPU で最大 76 tok/s、さらに MTP で最大 2.2 倍高速化と説明しています。クラウド呼び出しゼロでローカル LLM を動かす土台です。
そして AI Edge Gallery のアップデート。MCP(Model Context Protocol)統合、通知、セッション継続。MCP は Android アプリ側の実験機能として Streamable HTTP に対応し、iOS は今後対応予定です。要するに「オンデバイスのモデルが、外のツールにエージェント的に手を伸ばせる」ようになった。
結局のところ、Apple が Apple Intelligence で先行して敷いた「オンデバイス AI」のラインに、Google が同じ高さで並んできた。違うのは MCP を取り込んできたところ。Anthropic のプロトコルが、Google のオンデバイス基盤に正面から乗った。Apple は独自路線、Google は MCP で開けた。
正直、これは数字を見るまでもなく勝ち筋がある話で、Android の世界シェアと Tensor SDK が組み合わさると、開発者から見て「Pixel 10 向けに作る」コストが急に下がる。MCP に乗ったということは、Google Workspace、Google Maps、web fetch のような MCP サーバーを、ローカルモデルから呼べる構造になっていく、という話。
日本国内で Pixel を使っているユーザーは少数派、という指摘はもっとも。けれど話は逆で、Tensor SDK は Pixel 10 ファミリー限定でも、LiteRT-LM 自体は Android、iOS、Web に広がるランタイムなので、Pixel 以外の開発にも効いてくる土台ができた。
国内のスタートアップで、「LLM 機能を載せたいが API 費用がきつい」と止まっていたアプリは、LiteRT-LM で Gemma 4 E2B / E4B のようなエッジ向けモデルをローカル実行する選択肢が現実的になる。月額の API コストを抑えられる、データは端末から出ない、応答も端末内で完結する。プライバシー要件が厳しい医療・金融・行政向けアプリで、この構成は刺さる。
ここから 12 か月で何が変わるか。Android アプリの 1 割が「ローカル LLM 同梱」になる、と言うと盛りすぎだが、ニッチな B2B アプリでは普通になる。MCP に乗った AI Edge Gallery 経由で、ローカルモデルが Google Workspace、Google Maps、web fetch のような外部サーバーに手を伸ばす日常も、年内には出てくる。
クラウド一辺倒だった生成 AI が、もう一度「デバイスの中」に折り返してきた、という話。Apple、Google、Anthropic(MCP 経由)の三者が、それぞれ別の角度から「ローカル AI」を押している状況。日本の開発者にとっては、選択肢が増えた週。
Google Developers Blog: Tensor SDK Beta with LiteRT
Google Developers Blog: Blazing fast on-device GenAI with LiteRT-LM
Google Developers Blog: A Smarter Google AI Edge Gallery