
倉庫で約 50 時間ぶっ通し、人間の遠隔操作なしで荷物を仕分け。これ、Figure AI のヒューマノイドがやった、という話です。
ちょっと待って、数字を整理させてください。Bloomberg 配信記事によると、Figure AI のヒューマノイドロボットが、荷物の仕分けを約 50 時間ノンストップで続けたとのこと。CEO の Brett Adcock は Bloomberg Television のインタビューで、テレオペ(人間の遠隔操作)は一切ない、と説明しています。
倉庫の仕分けって、地味に難しい作業です。箱の形がバラバラ、ラベルの向きもバラバラ、コンベアのどこに置くかも荷物ごとに違う。これまでのロボはどれかひとつしか得意じゃなくて、たとえばラベル読みは得意だけど箱の持ち上げ方が固定、みたいな構造でした。
Figure のロボットを動かしているのは Helix という Figure AI 独自の VLA モデル。VLA は Vision-Language-Action、視覚と言語と行動を一本のモデルでつなぐ AI のことで、「箱を見る → ラベルを読む → どこに置くか決める → 腕を動かす」を 1 個の頭で処理します。
これ、実物を見ると印象が変わるやつだと思います。Figure の公式技術記事では、物流の荷物仕分けは箱や袋のサイズ、形、硬さがばらばらで、ラベルの向きもそろえる必要があると説明されています。さらに、Helix 側にはステレオ視覚、マルチスケールの視覚表現、自己キャリブレーション、動作を速める「Sport Mode」のような改善が入っている。単なるアームの反復動作ではなく、現場のばらつきに合わせて動く方向です。
正直、ここが一番突っ込まれているところです。
これまでヒューマノイドのデモ動画は、編集でつないだり、複数回トライした成功カットだけ並べたり、あるいは見えないところで人がコントローラを握っていたり、というのが当たり前でした。Figure AI はそこに対して、「約50時間ノンストップ、テレオペなし」と説明した。これが継続して再現できるなら、ヒューマノイドの自律性の議論は明らかに次のステージに入ります。
ただ、ライブ配信であっても、バッテリー交換・モデル切替・ソフトリブートを「介入」と数えるかどうかで、評価は揺れます。Bloomberg 本文で確認できるのは「約50時間」と「テレオペなし」というところまで。101,391個や81時間といった後続の数字は別報道では出ていますが、Figure 公式または Bloomberg 本文で同じ数字を確認できないため、ここでは採用しません。
日本の文脈だと、これ、物流 2024 年問題と直結する話なんですよ。トラック運転手の労働時間規制でラストワンマイルが詰まっている横で、倉庫側の人手不足も同じくらい深刻。Amazon・楽天・ヨドバシのフルフィルメント現場は、もう国内労働力だけでは絵が描けません。
ヒューマノイドが「人と同じ動線で、人と同じ速度で動ける」状態に近づくと、倉庫の設計を ロボ専用に作り直さなくていい、というのが効きます。これまでの倉庫ロボ(KIVA 系の自律搬送ロボ)は、フロアごとロボ仕様に改造する必要があった。Jim 系の人型は、既存の棚・既存のコンベア・既存の通路にそのまま投入できる前提です。
ただし価格はまだ未公表。Figure AI は 2025〜2026 にかけて GP モデルの量産を進めているフェーズで、現実的に日本の物流業者の棚に並ぶのは、早くて 2027 年後半〜2028 年あたりだろう、というのが順当な見立てです。
仕分け 1 タスクで約50時間動いた、というのは確かに新しい。けれど 「箱を仕分ける」以外の作業に同じ精度が出るかはまだ別の話です。倉庫の中でも、ピッキング(棚から商品を取る)、梱包、検品、シール貼り、こういう「人間が当たり前にやってる小作業」は、まだヒューマノイドが苦手な領域として残っています。
それから、稼働音・消費電力・故障時のメンテ体制、このへんは Bloomberg 記事だけだと見えない数字。日本の物流現場に入れるとなると、消防法上の問題(リチウムイオン電池積載量)も検討が要ります。
「倉庫の中の作業員が人型ロボに置き換わる未来」が、SF っぽい話から 次の 3 年で発注書を書く話に降りてきた、というのが今回の意味だと思います。続報待ちですね。
情報元
– The Star / Bloomberg — Robotics CEO Vows No Intervention in Humanoid’s Viral Trial Run(英語)
– Figure AI — Helix Accelerating Real-World Logistics(英語)
– Figure AI — Helix(英語)
– Figure AI 公式 YouTube チャンネル(英語)