
Apple が Tim Cook → John Ternus という CEO 交代と同じ 4 月 20 日付で、もう 1 本の人事プレスリリースを出していました。内容は 「Johny Srouji が Chief Hardware Officer(CHO)に就任」。これ、なかなかすごい話なんですよ。
要はこういうことですね。
Ternus が CEO に上がる玉突きで、ハード組織の頂点を 1 本化した、という動き方です。
公式発表で、Tim Cook はこう言っています。
Johny は、私がこれまで一緒に働いてきた中でも最も才能のある人物の 1 人だ。Apple のシリコン戦略を推し進めてきた彼の役割は唯一無二で、その影響は社内だけでなく業界全体に及んでいる。(Apple Newsroom・要約)
Ternus もプレスでコメントを寄せていて、「Johny はエグゼクティブチームで素晴らしいパートナーだった。CHO としてもずば抜けた働きをしてくれると確信している」(要約)と続けます。この 2 人が CEO と CHO として並ぶ、という設計が今回の肝です。
で、何が変わるかというと、「ハード側の意思決定が CEO 直下で 1 つに束ねられる」 ということなんですね。これまでは Ternus(製品ハード)と Srouji(チップ・モデム)の 2 本立てでしたが、その上をさらに集約して CEO 直下に CHO を置く、という構造変更になります。
Apple が Srouji を抜擢した理由は、彼の経歴を追うと自然に見えてきます。
ちなみに A4 以降、Apple シリコンは A シリーズ → M シリーズ → S シリーズ → U1 → C1 モデムと、Apple の垂直統合戦略の中枢を全部 Srouji の部隊が作ってきた 格好です。最近では Apple 独自開発の 5G モデム も Srouji の管掌で、Qualcomm 依存を切り離す流れの張本人でもあります。
Apple の発表は、この経歴を踏まえて 「シリコン、バッテリー、カメラ、ストレージコントローラ、センサー、ディスプレイ、セルラーモデム——Apple の全製品ラインにまたがる基幹領域でブレークスルーを起こしてきた」 と整理しています。要するに、Apple の「製品の中身側」をずっと回してきた番頭格、という位置づけです。
これは Apple 自身の発表ではなく、9to5Mac が関係者取材ベースで書いている話ですが、並行して Apple のハードウェアエンジニアリング組織そのものが 5 つの領域に再編される という報道が出ています。
報じられている 5 領域は、iPhone、iPad・Mac、Apple Watch、AirPods、Apple Vision 周辺、といった 製品カテゴリ別の縦割り構造。Ternus が 1 人で見ていた製品横断の Hardware Engineering を、それぞれのカテゴリ責任者にマネジメントを降ろしたうえで、その上位を CHO が束ねる という読み方ができます。
(ちなみに、Apple 公式発表ではこの 5 分割までは踏み込んで書いていないので、細部の確定情報というよりは 組織運用側の方向性として受け止める のが無難です)
個人的に興味深いのは、CEO・CHO がどちらもハードウェア出身で固まった というところ。
結果として、製品と技術の意思決定が経営トップに直結する構造になります。Steve Jobs → Tim Cook の世代は「オペレーションとサプライチェーン」が経営の軸でしたが、Ternus × Srouji の次世代はシリコン・ハード・AI を軸にした経営、という色が相当濃くなりそうです。
Vision Pro 以降の次のフォームファクター、Apple Intelligence の基盤チップ、独自 5G モデムの展開——このあたりの判断が、従来より 1 枚薄くなった意思決定ラインで動いていく、というのが今回の組織刷新の読みどころ。続報待ちですね。
Apple Newsroom — Johny Srouji named Apple’s Chief Hardware Officer(公式プレスリリース)
Apple Newsroom — Tim Cook to become Apple Executive Chairman; John Ternus to become Apple CEO
9to5Mac — Apple splits hardware team into five key areas, per report